乗馬ホリディに参加されたお客様が、その体験をもとに本を出版されました。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
乗馬大好きな著者が、日本を飛び出し世界へ乗馬の旅に出た！
そこで目にしたもの経験したものは？！『こわがりさんの世界旅』に続く海外エッセィ第２弾！！
以下は「馬の旅」より一部抜粋です。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 馬上で至福を知る?ニュージーランド
この世に生きていると「ちょっとした幸せ」を感じる機会はそれなりにあるけれど、「至福」を感じるときというのはなかなかないものだと思うがどうだろう。
「ちょっとした幸せ」は心の持ちようでそれなりに得られるような気がするが、まるで夢の中にいるような、この上ない幸せな「至福」の時というのは、今までの私が生きてきた３０年の人生の中では３回しかなかった。
平均してみると、「至福」のときは１０年に１回しかなかったわけだ。だが普通はそういうものではないだろうか。
そのうちの１回はニュージーランドのコワイ(KOWHAI)ファームにファームステイしてる時の外乗で味わった。
空港では、コワイファームで働く２人の日本人が迎えに来てくれていた。 彼等の名は、正志さんと武雄さん（ともに仮名）。２人ともまだ若い。歳は聞かなかったが、どう見ても２０代である。車中で聞いたところ、彼らはワーキングホリデーでニュージーランドに滞在し、コワイファームで働いてるのだという。「コワイで馬の手入れの手伝いやら掃除やら通訳やらやっているんですけれどね、あいた時間には乗馬も教えてもらっているんです。楽しいですよ」と正志さん。私は聞いた。
「馬はだいたい何頭くらいいるの？」
「約７０頭ですね」
「コワイファームのチーフインストラクターは、ジョディ・スミス（仮名）っていう女の人だってね。どんな人？」
と神山氏が聞くと、正志さんは運転中にもかかわらず一瞬こちらを見た。それは「ジョディ」を尊敬する人間が、よそ者の私達に、彼女がいかに偉大かを知らしめておこうとする鋭い目線であった。
「ジョディはすごいっすよ！ニュージーランドの乗馬界では有名なんです。教え方が、僕から見てもすごくうまい。叱る時は厳しく叱りますけれど、褒めるときには徹底的に褒めるんです。僕はここで初めて乗馬を習ったんですけど、ジョディには、『素晴らしいわ、マサシ！３年ぐらい習ってるように見えるわよ』って言われましたよ」
得意げに彼は言う。
ここまで正志さんに言わせるジョディとはいかなる人物であるのか・・・・・私達の期待は高まった。
１時間ほどでコワイファームについた。
そこはファームというより、人間と動物が暮らす１つの王国のようなところだった。実際、あのコワイファームは、ヴァティカン市国より大きいのではなかろうか。
３６０度、見渡す限り広々とした草原と丘である。ここから見えるものほぼすべてが、コワイファームのものなのだそうだ。
丘のふもとに住居設備と旅人の宿と馬場がある。
その広さにも驚いたけれど、私は、馬が実に幸せそうに、広い敷地でくつろいでいるのに感動した・・・・・・・・・・・・
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現代のカウボーイ?カナダ
エルクリッジランチへは、空港からさらに車で３時間かかった。移動には疲れたが、エルクリッジランチはいいところだった。
とても広い。門から宿泊施設まで車がいる。宿泊施設からまわりを見まわすと、見渡す限りこの牧場の敷地だ。敷地だけで約９００エーカーあるそうだ。
景色もいい。外に出て見上げればロッキー山脈がドラマティックに連なり、眼下には川と平原が見下ろせる。
興味深かったのは、ロッキー山脈と川が時間によって色を変えることだった。
到着した次の日たまたま早く目が覚めて外に出ると、ロッキー山脈が、巨大な氷の塊のように澄んで見えて、それは美しかった。川も蒼白く輝いていた・・・・・・
馬に乗って、色とりどりの花が咲き乱れる草原を行く。 私達以外誰もいない 草原に花が沢山咲いていて、涼しい風がふくと、波が押し寄せるかのように徐々に草原がうねっていった。 その景色は、なぜか神聖なものに見えた。
実際、そこはインディアンの聖地の近くだったのである・・・・・・
そして川を渡ろうとしたところ、向こう岸に、私達の行く手をはばむように、沢山の牛が並んで渡れないときがあった。 後で聞いたところによると、柵が壊れていて、よその牛が迷い込んでいたらしい。
何十頭もいたはずである。だが、ジョンさんとその父親は二人で向こう岸に渡っていって、結局たった二人で、馬を乗りまわして牛を追い、大きな声をかけるだけでその牛達をすべて追い払ってしまった。
迫力のある光景だった。 普段温厚なジョンさんも、このときは厳しい表情になって大声をあげながら牛を追う。枝があちこちに張り出した、木の入り組んだところでも自在に馬を操って駈歩させているのでその技術に驚いた。
一頭、暴れた牛がいて、巨体でやみくもに走りまわったりしたのでハラハラしたが、結局それらの牛は、私達から離れたところで、きれいに列をつくり川を渡って逃げていった。それが忘れられない。
あれを対岸から見ていた小さな子供達も、「うちのおじいちゃんやお父さんは偉い人なのだ」と感心しているに違いないのである。
